■ 第35回(2010.08.05):リーダーの首に鈴を付ける方法
ビジネスコーチの橋場 剛です。
5月に刊行された『優れたリーダーに変わる たった1つの行動』の
2刷重版が決定しました。皆様が応援してくださったおかげです。
拙著をお読みくださった皆様にこの場を借りて改めて心より御礼申し上げます。
どうもありがとうございました。
本の刊行を機に、講演やセミナーの御依頼をいただき、
いろいろな場面でエグゼクティブ・コーチングやリーダーの自己変革について
お話させていただく機会をいただきました。
そこで、複数の方からいただいた重要な質問があります。
それは
◆エグゼクティブ・コーチングを「受けさせたい人」に、
どうすればエグゼクティブ・コーチングを受けてもらえるのか?
という質問です。
こういう質問の裏側には
エグゼクティブ・コーチングを受けさせたい人に限って
「自分は変わる必要がない」もしくは
「エグゼクティブ・コーチングなど私には不要だ」
と思っている人が多い、という冷厳な現実があります。
計画の段階ではとても良い案に思えるものの、
いざ実行しようとすると非常に難しいことを
「猫の首に鈴を付ける」などと表現しますが、
「リーダーの首に鈴を付けるにはどうすればいいか?」
という問題です。
これはエグゼクティブ・コーチングに限らないことですが、
弊社のスクールや公開セミナーに自主的に参加される方は皆、
学習意欲が高く、向上心の高い方々です。
貴重な時間とお金と労力を投資して、
自主的に学習の場に参加されるので、結果として
成果が得られる可能性も非常に高くなります。
一方、企業研修などでは、リーダーシップやマネジメント上の課題があり、
それらをしっかり身に付ける必要がある方に限って、
研修当日に無断で欠席したり、
平気で遅刻してきたりするということがよくあります。
相撲に例えれば、「相手が土俵に上がっていない」状態であり、
「力士のつっぱりが空(くう)を切る」状態です。
一体どうすれば、相手に土俵に上がってもらえるのでしょうか?
エグゼクティブ・コーチングを受けさせたい人に、
どうすればエグゼクティブ・コーチングを受けてもらえばいいのでしょうか?
私が直近でエグゼクティブ・コーチングを実施させていただいた
3名の経営幹部の方々からのある言葉から
私はそのヒントを得た瞬間がありました。
エグゼクティブ・コーチングを開始するときに
私が必ずクライアントの方に訊く質問があります。
それは
◆これから始まるエグゼクティブ・コーチングに
どんなことを期待したいですか?
という質問です。
この質問に対して3名の経営幹部の皆さんは
「何か自分にとっての新しい課題が見つかり、
よりよいリーダーに変わるきっかけが得られればいいです」
とそれぞれの言葉で答えてくれました。
「新しい課題」「変わるきっかけ」という2つの言葉が
3名に共通した想いでした。
エグゼクティブ・コーチングの効用を
キーワードを2つで表すとすれば
◆「視野の拡大」と「前向きな自己否定」です。
エグゼクティブ・コーチングを受けると
なぜ視野が拡大するのかと言えば、
最大の理由は、クライアント本人が普段考えないような質問を
コーチからシャワーのように浴びせかけられるからです。
私自身、これまでに複数のコーチをつけた経験があるので
コーチングを受けることによって自身の中で起こる変化を
体感しているのですが、コーチングを受けている最中は
コーチによって数多くの質問が投げかけられることによって、
自分ひとりで考えているときよりも多くの情報をインプットし、
多くの情報をアウトプットすることになります。
つまり一時的に脳が活性化している状態が作られることになります。
ある実験データによると
脳に速く大量の情報を送り込む速読トレーニングを重ねれば重ねるほど、
脳の活性化が進んでどんどん情報をラクに処理できるようになる(※)
ということが分かっています。
多くの質問を投げかけられ、頭を高速で回転させている状態は
速読を実践している瞬間と似ているのかもしれません。
多くの情報を認識・処理できるようになれば、
自分ひとりでは思いつかなかったアイデアも次々に
湧いてくることがあります。
これが前述した「視野の拡大」につながります。
会社の経営に関して
社外取締役や監査役は「目に見えるもの(財務・企業活動)」に
焦点を当てることで視野の拡大を促進します。
それに対して、エグゼクティブ・コーチは
「目に見えないもの(リーダーシップ・信頼関係・コミュニケーション等)」
に焦点を当てることで、クライアントの視野の拡大を促進します。
前述の「前向きな自己否定」というのは、言い換えれば
「他にもっといいやり方があるのではないか?」
「いまの自分のやり方がベストなのだろうか?」
と自分自身に問い掛けられる力です。
このように問い掛けを自ら作り出すことができる人の根底には
仕事に対する真摯で謙虚な気持ちや
周囲への深い感謝の気持ちがあります。
それは、決して現状に満足しない謙虚な気持ちと
周囲に支えられているからこそ今の自分があるということを
心の深い部分で分かっていないければ、
<よりよい自分に成長しよう>というインセンティブ、モチベーションは
決して生じえないからです。
エグゼクティブ・コーチングを受けたからといって
企業全体の業績が短期間で劇的に変わるかと言えば
決してそのようなことはありません。
エグゼクティブ・コーチングは具体的な成果が出るために
3ヶ月間、6ヶ月間、1年間という長い時間がかかる
「根気のいる活動」です。
ただ1つ言えることは、自分ひとりで考えるよりも、
他人の力を借りることで、実践的かつ効果的なアイデアが
思いつく可能性が広がるということです。
つまりコーチングを受けるエグゼクティブ自身の
経営判断としての選択肢が広がる、ということです。
ここまでコラムを読んでくださった読者の皆さんは
本コラムの冒頭に書いた質問、
◆エグゼクティブ・コーチングを「受けさせたい人」に、
どうすればエグゼクティブ・コーチングを受けてもらえるのか?
と訊かれたらどのように答えるでしょうか?
今回は敢えて私はこのコラム上では答えを書かないことにします。
メルマガ読者の皆様にもじっくり考えていただきたい重要なテーマだからです。
質問の答えを書く代わりに、ヒントとなる2つの箴言をご紹介して
今回は本コラムを締めくくりたいと思います。
「リーダーとは希望を配る人のことだ」
― ナポレオン(フランスの皇帝)
「新しいことを始めるのはこわくない。
こわいのは新しいことを始めなくなることだ」
― マイケル・ジョーダン(元バスケットボールプレーヤー)
(※)呉真由美著『スポーツ速読 完全マスターBOOK』(扶桑社)を参照




