現場を読む

■ 第29回(2010.02.04):“意識”が変われば、行動は変わるのか?

ビジネスコーチの橋場 剛です。

企業研修でも、弊社のビジネスコーチスクールでも リーダー変革を行う上での重要な考え方として いつも必ずお伝えしているものの1つに

「思考の枠」

というものがあります。

先入観や思い込み、固定概念にとらわれてしまっている状態を 「思考の枠が固い」とか「思考の枠にとらわれている」 などと言います。

「リーダーは、思考の枠を外すことが重要です」 と研修やスクールでお伝えしている以上、 私自身も「思考の枠を外す」ための努力と行動をしないと いけないと思っており、よく自分自身の従来の考え方や理解を敢えて 疑ってみることがあります。

そして現在、私自身が「従来の自分の考え方」の中で 疑いを抱いている或る重要なテーマがあります。

それは

“気づき”があれば、行動変革は本当に起きるのか?
“意識”が変われば、行動変革は本当に起きるのか?

ということです。

つまり「意識」と「行動変革」との因果関係を疑っている、 というわけです。

両者の因果関係は、厳密には証明することはできません。

それは、「気づき」がなくても「行動変革」が起きる可能性があるからです。 別の言い方をすれば、「気づき」は行動変革を引き起し得る 多くの手段の中の1つにすぎない、ということです。

このことについて昨年私はある本を読んで衝撃を受けました。 それは脳研究者・池谷裕二さんが書いた本(※)で 次のことを知った瞬間でした。

その本では「手を上げる」という1つの行為(動作)について 次のように分析されていたからです。

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手に「指令」が行って動くのと、「動いた」と感じるのは どちらが先かという問題だ。

実は、これは常識とは逆で、「動いた」と先に感じる。 それに引き続いて「動け」という指令が手に行く


◆認知レベル:(1)動かそう→(2)動いた
◆脳活動レベル:(3)準備→(4)指令

実際に4つの順番を計測してみると

(3)準備 →(1)動かそう →(2)動いた →(4)指令
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私はてっきり「指令→動いた」だとばかり思っていたので、 この事実にはとても驚きました。

このことを知った瞬間に私の頭の中に浮かんだのは、

(A)「意識を変える→行動が変わる」なのか、
(B)「行動を変える→意識が変わる」なのか、

という疑問でした。

実際に私が組織変革をお手伝いさせていただいている 企業の方々の行動を思い浮かべると、

確かに(A)の場合だけではなく、(B)の場合もある、 ということに気づく瞬間があります。

そして(B)のケースがうまくいく場合、ある共通点が見られることに 気づきました。


◆「行動を変える→ β(ベータ) → 意識が変わる」


つまりβ(ベータ)に入る或る行動こそが共通点です。

このβ(ベータ)には一体何が入るでしょうか? これがないと、いくら行動を変えても、意識が変わる可能性は 低くなってしまいます。


β(ベータ)に入るは「継続する/繰り返す」ことです。


例えば、あなたが管理職で、 まったく勉強しない部下、まったく読書をしない部下に対して 部下にもっと勉強してもらいたい、 部下にもっと読書をしてもらいたい、 と強く思っていたとします。

そのときに部下に対して次の(a)(b)どちらのアプローチをするでしょうか?

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(a)「読書のメリット」を伝え、読書の良さに気付かせ、読書を薦める
  (=上記の(A)「意識を変える→行動が変わる」のアプローチ)

(b)推薦する本を渡し、「とりあえず読んでみて」と伝える
  (=上記の(B)「行動を変える→意識が変わる」のアプローチ)
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どちらも正解です。

なぜなら、どちらのアプローチも部下の行動を促す上で、 十分に効果を生む可能性があるからです。 (正確に言えば、(a)(b)以外にも方法はあり得ます)

しかしながら(b)のアプローチは、「1回伝えただけ」 では決して本当の意味での行動変革は実現されません。 本当の意味での行動変革のためには 「継続する/繰り返す」ためのよりよいフォローが必要です。

ふだん読書をまったくしない人に対して 読書の良さや魅力をたとえ1,000回伝えてみたとしても 必ずしもその人が読書をするとは限りません。

その場しのぎの「調子のいい返事」が返ってくるだけで 実際にはなかなか行動に移されない、 そんな体験をされた方も少なくないのではないでしょうか。

そんな場合はその人に「とりあえず読書させてみる + 継続」 の環境をつくることが有効です。

「とりあえず、行動させてみる」というアプローチは ときには相手にとってやや強引に受け止められる場合もあるかもしれませんが、 この「とりあえず(=1回)」が「継続される/繰り返される(=複数回)」 とある時点で急激に意識が変わる可能性があります。

すると次に疑問が湧いてくるのは 「継続される/繰り返される」ためにはどうすればいいのか? という点です。

メルマガ読者のみなさんは、この質問に対してどのように答えるでしょうか?


一番簡単かつ有効な方法は、

◆「あらかあじめ1日のスケジュールに組み込んでおくこと」

です。

効果的な情報共有を促進するために弊社が推奨している手法の1つに 「4つの質問」というものがあります。

これは弊社のクライアント企業のほとんどすべてで 導入・実践されているものですが、 4年前に初めて「4つの質問」を知り、現場で導入された企業の幹部と 先日お会いする機会がありました。

「4つの質問、いまも現場で続けていますよ」

と彼が言うので

「いつ実践されているんですか?」

と私が訊くと

「1週間の終わりに、メールでチームメンバーに送ることを  ルールにしているんです。所要時間は10分です」

と話してくれました。

実はこの短い会話のやり取りの中に 「継続する」ための重要なメッセージが含まれています。

それは
◆「いつ、何分間行うのか」を決めている、ということです。

例えば、 毎日出社前の10分間で行う、とか 毎週月曜日に5分以内で行う、といった具合です。

ここで思い出されるのは サントリー創業者の鳥井信治郎氏の言葉です。

「やってみな、やらなわからしまへんで」

     * * * * *

メルマガ読者のみなさんの中に、 もしもいま職場や仕事において継続すべきことで、 うまく継続できていないことがあるとしたら ぜひ次の質問を自分に投げかけてみてください。


<質問>
◆「それは、いつ、何分間行いますか?」

ここで自分意志が弱く、あまり継続する自信がないという方に お薦めな方法があります。

「いますぐに手帳に書き込むこと」です。

「いますぐに」です(笑)。

例えば、上記の質問について 「○○を毎週月曜日の朝8時に5分以内で行う」と決めたとしたら、 少なくとも今年2010年の手帳の12月31日までの すべての月曜日朝8時の欄にその行動予定を書き込むことです。

このやり方の唯一の弱点は、 「手帳に書き込む」という行動自体が促進されない場合です。 この場合はさすがに救いようがありません・・・(笑)
(※)池谷裕二著「単純な脳、複雑な『私』」(朝日出版社、2009年)