■ 第28回(2010.01.07):お笑いから学ぶ組織力強化の7つの視点
ビジネスコーチの橋場 剛です。
先日、お笑いのライブを観に行ってきました。
お笑いの世界はリーダーの仕事・ビジネスコーチングの仕事とは
一見何ら関係がなさそうですが、案外勉強になる点が少なくありません。
今回はお笑いから学ぶ組織力強化の「7つの視点」について
考えてみたいと思います。
◆第1の視点:「つかみ」
漫才コンビが、小刻みにパチパチパチパチーっと拍手をしながら
「いやー、どーも、どーもぉー、漫才コンビの○○○でーっす!」
と登場したあと、30秒くらいの短い時間で
モノマネをしたり、時事ネタについて語ったりする
おなじみの場面です。
組織における生産性の低い会議、盛り上がらない会議の多くは
この「つかみ」に相当するウォーミングアップや
アイスブレイクが不十分な会議だったりすることがあります。
◆第2の視点:「沈黙」
先日、観に行ったお笑いライブに出演したある漫才コンビは
意図的に「沈黙」の状態を引き起こして
観客から巧みに拍手を引き出していました。
「沈黙」は確実に相手の思考と行動を促します。
その漫才コンビのネタは観客にいまひとつ「ウケ」ていませんでした。
(敢えて「ウケ」ないところもこのコンビの狙いだったのかもしれませんが)
そのとき彼らは舞台上で一歩前に出て、両手を腰に当てて「どうだ!」
と言わんばかりに得意顔をして仁王立ちして沈黙を決め込みました。
5秒経過。
観客の頭の中には「?」が浮かんでいます。
さらに5秒経過。
まだ観客の頭の中は「?」のままです。
さらに5秒経過。
するとパチパチとまばらな拍手が客席から起きました。
さらに5秒経過。
そして、客席からは大きな拍手が。
ここですかさず
「お客さーん、別にここで拍手しなくてもいいのに、
耐えきれずにとうとう拍手しちゃいましたね~」
と漫才コンビ。
一気に客席は笑いに包まれました。
◆第3の視点:「ツッコミ」
職場においてうまく「ツッコミ」を入れるためには
相手をよく見て、相手の話をよく聞く必要があります。
また相手との強い信頼関係が大前提です。
仮にあなたがわざと「ボケ」たのにもかかわらず、
周囲が期待する「ツッコミ」を入れてくれないとしたら、
周囲のあなたに対する信頼度が低下しているからかもしれません。
この場合は間違いなく
「嗚呼、アノ人、またつまらないこと言っているよ・・・」という
周囲の諦念(ていねん)がそこには潜んでいる可能性があります。
◆第4の視点:「イメージさせる」
優れた落語家・優れた小説家が読者の想像力を掻き立てるように、
優れた経営者・優れたリーダーは社員の持つイメージを膨らますのが
上手な方が多いようです。
例えば、楽しく過ごしたお正月休みをどう伝えるか。
Aさん「この正月は家族・親戚とゆっくり過ごせて、最高に楽しかったよ」
Bさん「この正月は、サプライズな出来事があってね。
親戚一同で新年のお祝いをやったんだけど、
散歩から帰ってきたら家じゅうが真っ暗でね。
部屋の電気をつけたらトラだの鹿だの巨大なぬいぐるみが5体くらい
置いてあって、ふとテーブルの上を見ると
<隣の部屋へどうぞ。ドッキリ大成功>とメモ紙に書かれていて・・・」
どちらがよりイメージが伝わるか、差は歴然です。
◆第5の視点:「演じる」
◆第6の視点:「スベッたときの対応力」
これらは2つで1セットです。
経営もマネジメントも、いつもいいときばかりではありません。
どんなに優れた業績を残している偉大な経営者でも
どんなに好業績を上げた企業でも
一度や二度は必ず苦汁をなめています。
私のクライアントの或る役員の方は
「辛い時でも、周囲に対しては敢えて元気な自分と平常心を装うように心がけている」
と言います。
「そういえば、○○さんはいつでもエネルギッシュですよね」と言うと
「橋場さん、実は私だって人知れず弱気になったりすることもしょっちゅうあるんです」
と正直に話してくださったことがありました。
「スベッたとき」は企業活動に置き換えれば、「計画通りに進まないとき」です。
そんなときこそ、経営者・リーダーの真価・対応力が問われるように思います。
* * * * * * * * * * * *
ここまでに書いた「6つの視点」はやや強引ではないか?
と感じる読者もいらっしゃるかもしれません。
そうしたツッコミ、歓迎です(笑)。
実は、ここまでに書いたことは
「お笑い」でいう「つかみ」もしくは「フリ」に当たる部分で、
メルマガ読者のみなさんに今回一番お伝えしたいことは
次の第7の視点です。
◆第7の視点:「絶え間ないネタづくり」
お笑い芸人は、言うまでもなく「笑わせる」のが仕事です。
「笑わせる」ために、次から次へと新しいネタをつくり、
ボケたり、ツッコミを入れたり
モノマネをしたりします。
リーダーは、
「他の人とともにゴールを達成する」
「チームで結果を出す」
のが仕事です。
「ゴールを達成する」ために、
まず自分自身が日々学習・自己研鑚に励み、
周囲のメンバーとの信頼関係をつくり、
メンバーが自ら考え、自ら動くよう支援するのが仕事です。
かつては芸人さんは手本にしたい師匠を見つけて弟子になり、
師匠の見よう見まねで芸人の技を自分のものにしようとしましたが
いまは「お笑いタレント」の養成スクールがあります。
芸人さんと同じように、
企業のリーダーもかつては「上司の背中」を見るしか
リーダーシップやマネジメントを学ぶ方法がありませんでしたが
いまではビジネススクールなどの専門的なスクールがあります。
けれども実際には「養成スクール」で学ぶだけでは不十分で、
本当の意味で観客を魅了する芸人になる、
本当の意味で周囲を動かすリーダーになる、
そのためには地道な努力と現場での豊富な実践が欠かせません。
そして重要なことは、お笑いも組織開発・組織力強化も
「これをやったら絶対大丈夫だ!」
「これをやったら100点満点だ!」
という完璧な方法(コンテンツ・ネタ)などないということです。
仮にそうした“鉄板マネジメント(鉄板ネタ)”があったとしても
それが通用するのはある一定の期間だけです。
お笑い芸人は「お笑い」を追求すべく、
リーダーは「強い組織」「働きやすい組織」を追求すべく
新しいコンテンツ(ネタ)を開発し続け、
それを「現場に合った形で」現場にぶつけ続けることが重要です。
あくまで「現場に合った形で」です。
若者に人気がある芸人さんと年配者に人気がある芸人さんがいるように、
現場によって「受け入れられるリーダー像」は異なります。
例えば同じ企業の中でも
Aという部門にはα(アルファ)というマネジメントが効果的に機能し、
Bという部門にはβ(ベータ)というマネジメントが効果的に機能する
といった場合です。
α(アルファ)やβ(ベータ)には例えば
トップダウンかボトムアップか、
「指示型」か「委任型」か、
「コーチ型」か「援助型」か
などの言葉が想起されるかもしれません。
「お笑い」の世界も、「組織開発」の世界も、
どんな相手(組織)に対しても、いつなんどきでも
必ず受け入れられる完全無欠の方法というのは決してあり得ません。
それは消費者心理や市場環境が変わり続けるのと同様、
観客や組織で働く人たちの考え方や気持ちも
めまぐるしい早さで日々刻々と変化していくからです。
◆「型をしっかり覚えた後に、型破りになれる」
歌舞伎役者の中村勘三郎さんの言葉です。
経営者やリーダーにとっての「型」とは
コミュニケーションやマネジメントの基本に当たります。
「型破り」というのは
「現場に合った形のオリジナルのマネジメント方法」だと思います。
多くのリーダーや経営者が
いったん過去の成功体験を捨て去り、
いまの組織にふさわしい新しい「ネタ」「コンテンツ」を開発・実践されることで
新しく始まった2010年に果敢に立ち向かっていく、
そんな光景を期待しつつ、楽しみにしています。




