現場を読む

■ 第26回(2009.10.15):私が感動したAさんの果敢な挑戦

ビジネスコーチの橋場 剛です。

いま、ある外資系企業の役員Aさん(男性)に対して エグゼクティブコーチングを行っています。

このエグゼクティブコーチングでは彼以外のステークホルダー(利害関係者) 4名の方々を巻き込んでいます。 彼の上司、同僚、部下の方々です。

実施の目的としては クライアント本人(役員Aさん)を周囲がどう思っているかを事前に聞き、 周囲のクライアント本人に対する見方を変えるために行います。

ステークホルダーの方々を巻き込む理由は、 今回のエグゼクティブコーチングの目的が単なる彼個人の目標達成ではなく 彼の「行動変容」が目的となっているためです。

先日、エグゼクティブコーチングを開始してから3ヵ月が経過し、 彼のステークホルダーの方々への事後ヒアリングを実施しました。

ヒアリングの目的は「エグゼクティブコーチング開始前(3ヵ月前)」と 「エグゼクティブコーチング終了後(3ヵ月後の現在)」とを比較し 以下の4点を明確にすることです。

1.クライアントの行動がどのように変化したのか。
2.クライアントの行動の変化が周囲に対してどのような「プラス」の作用をもたらしているか。
3.クライアントの行動の変化が 周囲に対してどのような「マイナス」の作用をもたらしているか。
4.どのような改善を行えば、更によりよい行動変容を実現できるのか。

ここで非常に大事なことは
「役員Aさんの行動がどのように変わったのか」ということと 「その行動変化が、周囲にどのように影響しているか」ということを 分けて考える、ということです。

クライアントである役員Aさんの場合は、 「プレーヤーとしてではなく、役員・マネージャーとしての役割を意識・実践し、 役員・マネージャーとしてチームメンバーに関わる」

ということが1つの大きなテーマになっていました。

ステークホルダー4名への<3ヵ月後のヒアリング>で Aさんについて、以下のことが明らかになりました。


●(Q1)Aさんの行動は変わりましたか?
    (Aさんは役員・マネージャーとしての役割を意識・実践しましたか?)

●(A1)Aさんの行動が変わりました →4名/4名中
     Aさんの行動は変わりません →0名/4名中


●(Q2)Aさんの行動変化はプラスに作用していますか?
     それともマイナスに作用していますか?

●(A2)Aさんの行動変化はプラスに作用している →2名/4名中
     Aさんの行動変化はマイナスに作用している→2名/4名中


「プラスの作用」としては、「メンバーに仕事を任せるようになった」、 「マイナスの作用」としては、「自分の意見を言わなくなってしまった」 「行動が消極的になった」といったような内容がありました。

つまり「たしかに行動は変わった」、 しかし「必ずしもすべてがプラスには作用していない」というわけです。

では、Aさんがさらに優れた役員、尊敬されるリーダーになるためには 具体的に何が必要なのでしょうか。


言い換えると

[クライアントの行動変容] × α = [クライアントの周囲へのプラスの作用・影響]

という式のα(アルファ)に入る言葉は何でしょうか?


α(アルファ)に入るのは

■1.クライアントの「本気度・情熱」
■2.クライアントの「首尾一貫性(=言動をコロコロ変えない)」
■3.クライアントの「伝え方(=言葉づかいや表現方法)」
■4.クライアントの「説明責任(=なぜ、それをやるのかについて説明している)」
■5.クライアントの「自覚性(=自身の言動が周囲に及ぼす影響を客観視できる)」
■6.クライアントの「誠実さ」

といった要素です。

どんなに行動を変えたとしても それが「取ってつけたような表面的なもの」であったり そこに「心の底から湧きあがるような“想い”」が詰まっていなければ 決して周囲にプラスの作用を及ぼすことはできません。

どんなに行動を変えたしても 行動が「言っていること」と一致していなかったり、 「一時的な行動」にとどまっているしたら 決して周囲にプラスの作用を及ぼすことはできません。

しかしながら、外面(そとづら)ばかりがよく チームメンバーからの信頼度が低い経営陣、リーダー、マネージャーは 決して少なくありません。 彼らに欠落しているのはまさしくα(アルファ)です。

メルマガ読者のみなさんが 引き続き役員Aさんのエグゼクティブコーチングを続けるとしたら まずどのような言葉を掛けるでしょうか?

「たった3ヵ月で多くの行動変革にチャレンジされたことが まずは大きな一歩ですね!」

私は心の底から真っ先に、Aさんにそうお伝えしました。 Aさんの果敢な挑戦に素直に感動したからです。

リーダーの行動変化による周囲へのマイナスの影響は 決して「失敗」ではなく「プラスの成果を得るために欠かせない過程」です。

Aさんの場合、次のエグゼクティブコーチングのテーマは <α(アルファ)>の開発と改善です。

短期間で体を鍛えると筋肉痛になったり、関節痛になったりする いわゆる「副作用」を伴うことが少なくありませんが、 エグゼクティブコーチングにおけるマイナス作用も 真の行動変容のための「副作用」の1つだと思えば さらなるチャレンジへの意欲も湧いてきます。

ポーランド・シレジア地方の古い言い伝えに こんな言葉があります。

「かくあるはずの自分が、いまある自分を、 はるか遠くからじっと見つめて、悲しげに眉(まゆ)をひそめる(※)」
(※)犬養道子氏「わが心の風土」読売新聞1968年7月21日朝刊11面を参照

この言葉にはさまざまな解釈があり得ますが、 私自身は、リーダーのみなさんへの1つの示唆を 提供していると考えています。

リーダー自身・エグゼクティブ自身が常に自己を客観的に観察する、 組織のゴールを達成するために 段階的かつ着実に自身の行動変容作業を継続して行うことが いま、一層期待されています。

継続的な行動変容の実践者は、組織の大小や地位や役職の如何に関わりなく 真の優れたリーダー、尊敬されるグローバル・ビジネス・リーダーとして どんな時代でもどんな分野・世界においても活躍できるのだと思います。


■ビジネスコーチ橋場剛が講師を務めるセミナーのご案内

【法人向け】エグゼクティブコーチング導入事例紹介セミナー

日 時:11月19日(木)19:00~20:30
会 場:東京・永田町
定 員:10社限定
参加費:参加無料
詳細・申込 >> http://www.businesscoach.co.jp/seminar/case_ec.html