現場を読む

■ 第24回(2009.08.20):組織力を高める「情報をさばく技術」

ビジネスコーチの橋場 剛です。

今回は組織力を高める「情報をさばく技術」について 取り上げたいと思います。 まずは以下のケースについて考えてみてください。

<ケース>
あなたが所属する会社は3月決算。 不況の影響を受け、あなたが所属する事業部の 4-9月の上半期の業績は当初予算(計画)を大きく下回り、 営業利益の達成率は、対予算(計画)60%で赤字でした。

お盆休み明けに久し振りにメールを開けてみたら あなたの上司である事業部長から以下のようなメールが入っていました。

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【事業部長からのメール】

件名:下期の業績向上のために

○○事業部のみなさんには上期には精一杯努力していただき 事業部長として大変感謝をしております。 しかしながら、上期の業績は非常に厳しい状況です。 そこで下期のスタートに先立ち、9月から以下の3つの 施策を実施することにします。

◎施策1:広告費は一切使わない

◎施策2:当面は人材の採用は行わない

◎施策3:9月からの3ヵ月間で営業利益がプラスにならない場合、
     事業部社員の減給を検討する

みなさん、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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<質問>
メルマガ読者のみなさんは、 上司である事業部長から送られてきたこのメールを読んだ直後に 何をどのように考え、どのような行動を起こすでしょうか?

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事業部のメンバーひとり一人が何をどのように考え、 どのような行動を起こすかによって 今後この事業部の組織のパフォーマンスは大きく変わってきます。

■「三流」の人は、事業部長からのメールを他人事と捉え
 「ああ、自分には関係のないことだな」などと考え
 何も行動を起こしません。

■「二流」の人は、事業部長からのメール内容を鵜呑みにして、
 事業部長からの指示通りのことを実行しようとします。

■「一流」の人は、事業部長からのメールを能動的に(批判的に)検討し、
 事業部長からの指示をベースにした対案(改善案)を考えます。

■「超一流」の人は、事業部長からのメールの内容にとらわれず、
 今の事業部にとって最もよい抜本的な解決策を考え、実行しようとします。

(注)「超一流」であれば、そもそも事業部長からこのようなメールが 来る前に抜本的な解決策を実行しているのではないか、もしくは こういう重要な情報の伝達はそもそもメールで行うべきではない のではないか、といった見方も当然想定されますが、 話を単純化するために今回はその可能性は敢えて除外することにします。

今回の場合、「超一流」の人は少なくとも以下の5点について 「瞬時に考えて」います。

1.事業部長から送られたメールの「最大の目的」「真の目的」は何か?
2.上記1の目的を達成するために、事業部長から出された施策は
本当に適切(もしくは最適)か?
3.事業部長から出された施策が適切でない場合、 他にどんな施策が考えられるか?
4.上記3で考えられた施策が効果的である根拠は何か?
5.上記3で考えられた施策は実現可能か?

大事なのは「瞬時に」という部分です。

「上記1」については、 ある程度の経営者感覚さえ持っていれば、 事業部長から送られたメールの意図を比較的容易に 推察することができます。

今回のケースでは提示された3つの施策すべてが 「経費削減」に関する内容ですが、 事業部長の最大の目的が「事業部利益の向上」にあることが分かれば、

「経費削減だけではなく、 売上や利益を伸ばすために何か効果的な方法はないだろうか?」
と考えることが可能ですし、業績向上のためには そのような視点が事業部メンバーには当然に期待されています。

なぜ「超一流」の人はこのような考え方ができるのでしょうか?

ポイントは「情報の能動的な読み方・考え方」にあります。

超一流とそれ以外の人との最大の違いは、
「能動的に読んでいる(=能動的に考えている)」か
「受動的に読んでいる(=能動的に考えていない)」かにあります。
「能動的に読む」ことは言い換えれば「批判的に読む」ことです。

批判的に読むためには、 「論点が何かを常に考え、整理しながら読む」ことです。

つまり、論点を見つけ、論点ごとに答えを出し、 さらに論点を見つけるという作業を繰り返しつつ 自分なりに意見を整理していく作業が「能動的に読む」ということです。

こうした「能動的な読み方」は 単に書かれているもの(メール、書類、各種媒体)の字面を追って 言葉の意味を理解するだけでは決して身に付きません。

受け身の読み方ではなく、書かれている内容の意図と表現内容の適否を 考えつつ、もっとよりよい他の選択肢があるのではないかという観点から 自分なりの考えを整理して、周囲に対して提案できように努めるという 主体的かつ意欲的な姿勢と実践が不可欠です。

私自身も以前はこうした能動的な読み方・考え方が まったくできない人間のひとりでした。

しかしながら、読書や新聞記事などを読むときに 「論点と解答をメモしながら考える」 「論点とその関連図を紙に書き出す」 という地道な作業を積み重ねることで 約3ヵ月間で「能動的な読み方・考え方」を修得することができました。

ちょうど20歳の頃のことです。

「能動的な読み方・考え方」ができるようになることで、 書き方のレベルが上がり、 それに伴って「聞き方・話し方」のレベルも向上します。 なぜなら、前者は瞬間的な判断が求められるという点で 後者よりも難易度が高いからです。

上記の例では、以下の5つのステップで「考える」が実践されました。

■ステップ1:書かれている情報の「そもそもの目的」「真の目的」を考える
■ステップ2:書かれている情報に対して自身は「賛成か反対か」を考える
■ステップ3:反対の場合、「対案」を考える
(賛成の場合でも、その理由を自問する)
■ステップ4:対案が「優先される理由(優れている理由)」を考える
■ステップ5:対案の「実現可否」を考える

「能動的な読み方」を修得できると より正確に、より細かく、よりスピーディに考え、 効果を生み出す行動を起こすことが可能になります。

それを高いレベルで実践できれば 着実に周囲の信頼を得られるようになります。

メルマガ読者のみなさんも受け取った情報について 1日数十回から数百回もこうした「思考」を重ねています。

わずかな「思考の質」の差でも 1日、1週間、1ヶ月、1年と時間が経過すれば 「思考の質」の高い人と低い人とではそのパフォーマンスには 歴然とした差がついてしまいます。

そしてチームや組織の一員として仕事をする場合、 何よりも参加者全員が「当事者意識」を持つことが大切です。

ここでいう「当事者意識」とは 自分が主体的に行動しなければ組織は動かないという自覚と それに対応した行動を取る意識を指しています。

「組織力」を考える場合、往々にして <情報共有>や<仕組み>の重要性が強調されがちですが、 どんなに情報共有や仕組みが充実していたとしても また、どんなにコミュニケーションが活発であったとしても 構成員のひとり一人が共有された情報を 的確にさばく技術を持っていなければ組織力を高めることができません。

「情報を的確にさばく技術」とは、 ここで言う「能動的に読む力」のことです。

ここまでこのメルマガを読まれたみなさんは いま何を考え、どのようなアクションを取ろうと思われているでしょうか?

上記の考え方自体が1つの方法論であり、 必ずしてもすべての人がこうした考え方を採用する必要はありません。

しかしながら、チーム・組織の一員であるならば どのような発言・行動が組織の目的達成のために求められるか、 すべての構成員が意識する必要があります。

今回のメルマガに書かれた内容それ自体も メルマガ読者のみなさんには能動的に(批判的に)読む対象の1つと していただければと思っています。

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