■ 第21回(2009.05.14):「対前年比プラス」の目標に意味はあるのか?
ビジネスコーチの橋場 剛です。
いま私はいくつかの企業で組織力強化のプログラムを
実施・導入していますが、
この不況の中、企業の取り組みとして非常に重視されているのが
●PDCAサイクルを回し「続ける」
●研修やOJTで学んだことを実践し「続ける」
●自分やチームが変わり「続ける」
といった「続ける」という視点です。
「続ける」ためにいつも立ちはだかる壁は、
「続ける」ための”動機付け”の不足です。
先日、ある企業のマネジャーAさんからこんなことを言われました。
「PDCAサイクルを回すことの重要性も分かるし、
PDCAサイクルを回す習慣もできつつあるんだけど、
そもそも計画(予算)の数字が高すぎて、
どうがんばっても計画達成は難しいんですよね」
特に営業系の部門の幹部・管理職の方々は
常に予算達成のことが頭から離れず、
それが日々の仕事の悩みの種・プレッシャーになっています。
私はAさんに3つの質問をしました。
□「Aさんはその計画・予算を本当に達成したいですか?」
□「Aさんの部門のメンバーのみなさんはその計画・予算を
本当に達成したいと思っていますか?」
□「Aさんの部門では、計画・予算の数字の“意味”が
部門のメンバーのみなさんと共有されていますか?」
Aさんが在籍する企業は上場企業ということもあり、
常に対前年比プラス、それも対前年比110%とか120%増とかではなく
対前年比180%とか200%の予算・計画が組まれることもあり
営業サイドの方は常にプレッシャーを背負って仕事をしています。
こんなとき、私がいつも考えるのは、
「この計画・予算には、どのような“意味”があるんだろう?」
「この計画・予算を前提にして、どうすればもっと楽しい
仕事環境が作れるんだろう?」
ということです。
極論を言えば、上場企業か否かに関係なく
「計画・予算の数字そのもの」にはほとんど意味はありません。
例えば、売上10億円、利益1億円の予算(計画)を立てた
部門があった場合、
売上予算が10億5千万円でもなく、9億5千万円でもなく、10億円、
利益予算が1億1千万円でもなく、9千万円でもなく、1億円
でなければならない絶対的な理由はまずありません。
もちろんその予算(計画)通りに
売上・利益を達成できれば素晴らしいのですが
もっと大事なのは、
□達成されたら誰が、どう嬉しいのか?
□得られた利益を、何のために、どのように使うのか?
□予算達成が、自身やチームメンバー、組織にとっては
どのような財産を残すのか?
という点です。
「対前年比プラス」という考え方はとても危険で、
10年20年という長いスパンで考えるといずれ
「前年比マイナス」になります。
「年々拡大路線」を取る企業があってもいいですが、
「少数精鋭のまま拡大せずに、顧客満足度の向上に
ひたむきにチャレンジする」
ことを目指す企業があってもいいわけです。
私自身、毎週日曜日の夜に
社員全員に情報共有の目的でメールを送っていますが、
その中で毎週、
「利益予算達成で得られる、5つの嬉しいこと」
を明記しています。
社員と数字の意味を共有することも目的なのですが、
自分自身が目標の「意味」を再確認するためにも
敢えて毎週同じメッセージをそのまま記載してあります。
また全社員が集まるミーティングでも
自分なりの表現で
「会社のいまの仕事にはどんな意味があるのか?」
「どういう意識で仕事をすると楽しくなるか?」
ということを伝えるように心がけています。
「伝えたこと」と「伝わったこと」は
必ずしもイコールではないのですが、
「何のための予算数字なのか」を何度も共有化しないと
チームの士気は上がりません。
何より自分自身が
仕事に対して意欲的に取り組むことができないのではないでしょうか。
売上10億円、利益1億円などといった予算数字の背景には
必ず“意味”があります。
もしも意味などないと言うならば、“意味”を作る必要があります。
それが「意味付け」をするということです。
「意味付け」の表現はいくらでもありますが、
そこに社会性やワクワク感や将来性が感じられなければ
その数字は死んでしまいます。
“死んだ数字”のために、頑張る人はいません。
メルマガ読者の皆さんにぜひお薦めしたいのは、
□あなたの会社・チームの予算(計画)達成には
どんな“意味”があるのか?
□あなたの会社・チームの仕事によって、
誰がどんなふうに喜んでくれるのか?
□それは、あなた自身とあなたのチーム・組織に何をもたらすのか?
といった点について熟考し、
言葉にして、会社・チームで共有することです。
多くの人はトップダウンで決まった予算・目標に対して
“受け身”であり、高過ぎる予算・目標に疲れきっています。
けれどもそれらの予算・目標を「変えられない」以上、
予算達成できない理由を探すのではなく
どうすれば予算達成・目標達成のプロセスを充実し楽しいものにするか、
というのがリーダー・マネージャーの重要な役割ではないかと思います。
この「○○にはどんな意味があるのか?」
という質問は仕事の質を高めるためにとても有効で、
私自身、1日最低50回以上は自分にこの質問をしています。
□いまの仕事にはどんな意味があるのか?
□このメールを送ることにはどんな意味があるのか?
□いま仕事の不満や愚痴をこぼすことにどんな意味があるのか?
□この会議にはどんな意味があるのか?
□今年1年間の活動は、残りの人生にとってどんな意味があるのか? など
いま目の前にあることに対して
明確な“意味”を見つけることができれば
仕事はもっと楽しくなりますし、
幸せももっとたくさん感じられるようになるのではないかと思います。





