現場を読む

■ 第19回(2009.03.19):「泊まりたい宿No.1」超人気旅館の社長に学ぶ再生の秘訣

ビジネスコーチの橋場 剛です。

数億円の借金を抱えて破綻寸前だった老舗旅館を わずか4年のうちに、ある温泉旅館のランキングサイトで 「泊まりたい宿ランキングNo.1」の超人気旅館に 生まれ変わらせた社長さんに先日お会いする機会に恵まれました。

ホテル並みのホスピタリティ、露天付客室、レトロモダン など、彼の歩みが現在の旅館業界の流れを創り上げたと 言われています。

彼は産業再生機構で4年間アドバイザーを務められ、 そこで手がけられた再生案件のお話が大変印象的でした。

まずはダメな旅館は、経営者を見ればすぐに分かるとのこと。
例えば、

・自分さえよければいい、と思っている
 (経営が厳しいのに自分だけ高い収入を得ている)
・自分の旅館で出している料理を知らない
・社員の名前を知らない
・旅館(会社)の問題点は分かっているが、改善しない「言い訳」を言う
・過去の延長線上で生きている
・女将が必要以上に高価なブランド品を身に付けている

といった点です。

企業の再生を手がけるとき、経営者に対して最初にする質問(依頼)は 次の1つだけだそうです。

<質問(依頼)>
◆あなた(=経営者)自身が会社から出ていく(=去る)か、
 あなたの耳から上の脳みそを変えていただくか、
 1週間で決めていただけますか。

単に「考えを変えてください」 ではなく 「耳から上の脳みそを変えてください」という表現を使っているところに 意識変革・行動変革の並々ならぬ難しさを感じます。

いまエグゼクティブへのコーチングのニーズが高まっていますが、 周りを変える前にまず「あなた自身が変わる」 ということに対して経営者自身にコミットメントを求める 実に核心を突いた質問だと思いました。

企業再生の現場もビジネスコーチングの現場と同様、 地道な活動の積み重ね、という意味で 非常に泥臭い作業の繰り返しです。

「ダメな旅館は、口先ばかりで“本当の意味で”お客様を愛していない」

という言葉が特に耳に残りました。

お客様へのおもてなしが何より大切である旅館業であれば どんな旅館でも 「美味しい食事を最高のおもてなしで提供しよう」 と思うわけです。

成果を出せない旅館は、口先では 「美味しい食事をお客様に召し上がっていただきたい」 などと言いながらも、実際には経営者が 「調理場に足を運んでメニューをチェックしない」 「社員の名前を覚えない」 「定期的に旅館で食事をしない」などの 言ったことをやらないわけです。

つまり、優れた旅館でもダメな旅館でも自分たちの旅館の現状や課題は 同じように認識されているものの、 最終的に「再生できるかどうか」の明暗を分けるのは

■未来のあるべき姿にコミットしたかどうか
■言ったことを実行したかどうか

ただただこの点に尽きる、とおっしゃっていました。

「コミットメント」という言葉を辞書で引くと、 「約束」などと定義されますが、 実際に使われる場合にはかなり強い意味を持っています。

ビジネスコーチングの現場で 「コミットメント」という言葉を使う場合、

■誰が(具体的な個人名)
■いつまでに(具体的な日付)
■何をするか(具体的に)

を明確にすることを最低限の要素として求めています。

自分で決めたことは最後までやり抜く、 それがコミットメントであり、 それを徹底した人や組織が 最後に成果を上げられるということなのだと思います。

「自分はできている」と思っていたとしても コミットメントを「継続的」に実践している“組織”は ごく一部に限られるかもしれません。

読者の皆様の「あるべき姿」は、どのようなものでしょうか。

そして、「あるべき姿」に照らし合わせて 妥協してしまっていることはないでしょうか?

新年度を迎えるこの時期、一度振り返りをしてみませんか。