現場を読む

■ 第17回(2009.02.19):イチローに見習う。「ぼくは、1試合、1試合、ふりかえっています。」

ビジネスコーチの橋場 剛です。

私たちが普段、企業の管理職研修をさせていただくときに 心がけていることは 「クライアント企業が持続的に成長できる体質になること」を 支援することです。

では、「持続的な成長を実現できている会社」という言葉を聞いて 読者の皆さんが真っ先に思いつく企業はどこでしょうか?

私はこれまで何百人もの管理職の方に同じ質問をしてきましたが 一番多かった答えは「トヨタ自動車」でした。

けれども今、そのトヨタ自動車ですら、2009年3月期の業績が59年ぶりの 最終赤字に転落する見通しとなる非常事態に陥っています。

その一方で、このアゲンストの強風の中、 業績を伸ばし続けている会社があります。

世界経済が戦後最悪の不況に直面しているいまの状況では、 必ずしも1つの側面からだけで1企業の業績の善し悪しの理由を 説明することはできません。

ただ、こうした景気の状態とは関係なく 「結果を出す組織」と「結果を出せない組織」に見られる 決定的な違いがあります。

違いとは、 「何を、どのように続けるか」という <続ける対象>と<続ける方法>についての「工夫の有無」です。

これだけでは少し分かりにくいかもしれませんね。 以下では、より噛み砕いて解説していきたいと思います。

「続ける」という行為は、それ自体に<連続性>を含むものなので、 「続けること」=<仕組み化されたもの>なのです。

ところが、「結果を出す組織」が持っていて 「結果を出せない組織」が持っていない<仕組み>が3つあります。

■1つ目は、「情報共有」の仕組みです。

「情報共有」の典型的な方法は、「会議をする」ことですが、 私の経験では、およそ8割以上の会社が会議において いわゆる<PDCA>でいう P(プランを作る)とD(実行する)しか行っていません。 いつまで経ってもプラン→ドゥ、プラン→ドゥ、プラン→ドゥ・・・。 C(検証する)とA(改善行動をとる)はいつもないがしろです。

ないがしろになる理由は、C(検証する)とA(改善行動をとる)が 「単に、面倒だから」という場合が少なくありません。

では、どうすれば、C(検証する)とA(改善行動をとる)が確実に実行 されるのでしょうか?

それは、 CとAを「情報共有」の仕組みの中に <原則>として組み込んでしまうことです。

身近な例を考えてみましょう。 インフルエンザや花粉症の予防や対策をするこの時期、 外から帰ったら<うがいと手洗い>を欠かさないという方は 読者の中にもいらっしゃるのではないでしょうか。

一方で、一度はテレビの情報番組などに触発されて 「うがいと手洗いだけは励行しよう!」と決めたものの、 3日と続かなかった方もいらっしゃるでしょう。。

「続く人」と「続かない人」ではいったい何が違うのでしょうか?

両者の違いは、1日の活動の中に<原則>として 組み込んでいるか、組み込んでいないか、ただそれだけの違いです。

多くの人が毎朝の「歯磨き」を苦もなく続けられるのは それが<原則>だからです。

1つの仕事を部下に「丸投げ」したまま放置するリーダーと、 1つの仕事を「任せた」あとに「あの件、どうなった?」と フォローするリーダーとの違いは、

<フォローする>という「情報共有」の行為が 部下とのコミュニケーションにおける <原則>に組み込まれているか否かの違い

というわけです。

 「ぼくは、1試合、1試合、ふりかえっています。まとめてふりかえることはしません」
 とイチロー選手は話しています。

 試合後の「振り返り(=CHECK)」が <原則>に組み込まれているのです。


■2つ目は、「フォローアップ」の仕組みです。

「ある会議」で決まったことのフォローアップは通常、 「次の会議」で行う場合が多いと思います。

ここで特にないがしろにされるのは、 「誰が」フォローアップをするのか?という点です。

前の会議で決定されたことが5つあったとしたら 5つの決定事項毎にフォローすべき人は異なる場合でも、 「誰がフォローするのか」という<フォロー担当者>が決まっていないと 「なんとなくOKでしょう!」などとうやむやにされ 流されてしまいがちです。

「フォローアップの担当者を決める」だけでも PDCAの<C(検証する)とA(改善行動をとる)>の 実行確率はグンと高まります。


■3つ目は、「遊び心(ゲーム感覚)」です。

楽しいから続けられる、 わくわくするから続けられる、 シンプルですが、続ける上で最も重要なことかもしれません。

この「楽しい」とか「わくわく」の天敵が 「マンネリ化」です。

「マンネリ化」を回避するためには 新しい視点、新しい手法、新しい情報・素材を 常に投入し続ける必要があります。

つまり社外の人と食事をする時間を持つとか、 1日1冊は必ず本を読むとか、 1日1つは必ず各種のメディアからビジネスのネタを仕入れるとか、 こうした地道な活動を「続ける」ことが必要となります。

大量消費の時代を過ぎた今、 必ずしも「継続は力なり」という諺が成立しなくなっているのかもしれません。

なぜなら単に「継続すること」それ自体が結果を生むのではなく、 「何を継続するか」という<対象>と 「どのように継続するか」という<方法>に工夫が凝らされなければ 継続することの効果が失われかねないからです。

その大前提には、「何のために続けるのか」という根底的な部分についての 関係者間での情報共有が何より重要になるのではないかと思います。



■ ビジネスコーチの目

◆「部下を変えよう」と考える前にするべき、上司の仕事

一般的にビジネスコーチング研修と言われるものは、 そもそも何のために行われるのでしょうか? もしくは誰のために行われるのでしょうか?

ビジネスコーチング研修を一度でも受けたことがある方なら 研修の目的を 「部下の目標達成を手助けするスキルを身に付けるため」とか 「部下の自発的行動を促すスキルを身に付けるため」 と答えると思います。

この<目的>には大きな前提があります。

それは「部下を変える」という前提です。

いま現場で一番疑問視されているのは 「部下を変えよう」と考える「上司の意識」です。

部下の立場や部下の本音からすれば、
・「やる気のないあの上司からどうして自分が   コーチングを受けなくてはならないのか」
・「人の話を真剣に聞かないあんな上司には、   自分の本音など話したくない」 ・「人にコーチングする前に、まずはリーダー自身が   コーチングを受けて部下よりも先に変わるべきではないのか」
という疑問が当然のごとく湧いてきます。

実際、部下の自発的行動を促すために チームメンバーに対して「質問」をしたり、 「フィーバック」をしたりするのは リーダーであり、上司です。

「リーダーである自分は変わらないけれど、部下のあなたは変わってね」
などとリーダーが自分に都合のいい言葉を口にしても、 部下やチームは変わることはまずありません。

むしろ、チームの組織力を低下させることになりかねません。

組織力を強化したい、チーム力を強化したいと思うリーダーが まず投げかけるべき質問の相手は、<部下>ではなく、 <自分>に対してです。

最後に、リーダーとして飛躍するために 次の質問を自分自身に問いかけていただきたいと思います。

「自分はリーダーとして何を変えればいいのか?」