現場を読む

■ 第15回(2009.01.22):クライアント企業の会長に学んだ対話の方法とは?

ビジネスコーチの橋場 剛です。

昨年から、経営者や上級管理職などいわゆる「エグゼクティブ」の
方々に対するコーチングや研修のご依頼をいただく機会が多くなりました。

経営やマネジメントの経験が豊富なクライアント・研修の受講者の皆様から、
「マネジメントの実際」について多くを学ぶことができるのは、
ビジネスコーチという仕事をさせていただく醍醐味の1つであり、
大きな魅力の1つだと感じています。

きょうは、あるエグゼクティブのクライアントの方から最近お聞きした
非常に心に残ったエピソードを一つご紹介したいと思います。

クライアントの方は、設計監理・施工などを行う会社の取締役(Aさん)です。
彼の上司であるB会長は、なぜか取引先のトップから短期間で
とても強い信用・信頼を得ているとのこと。

私が「なぜ、B会長が<強い信用・信頼>を得ていると思われるんですか?」
とAさんにお聞きしたところ
「B会長に会った取引先のトップは決まって後日、
『B会長にはくれぐれもよろしくお伝えください』といったような御礼の言葉
や感謝の言葉を私にくださるんです」
とAさん。

そしてAさんはある時
「なぜB会長が短時間で取引先のトップから信頼され、感謝されるのか、
 その秘密が分かりました!」
と熱く私に語ってくださいました。

B会長は年末年始に主要な取引先のトップに挨拶に行かれるそうなのですが、
挨拶には必ず「1人で」行かれるとのこと。

取締役のAさんが同行したいとB会長にお願いしても、
「自分一人(=B会長)で行くから大丈夫」と言われるのがオチで
なかなか同行させてもらえないそうなのですが、
取引先のトップとどんな会話をしたかについては
事後報告として教えてもらえるそうです。

そして、B会長が取引先のトップと強い信頼関係を築き、
感謝される秘訣は、そのコミュニケーションの内容にあったというのです。


<B会長と取引先トップとの会話>

□B会長:「いま困っていることって何ですか?」

□取引先のトップ:「父親が高齢で病気がちなものですから、
          どこの病院で看てもらおうかと思いまして・・・」

□B会長:「それなら、○○病院がいいですよ」

□取引先のトップ:「貴重な情報、どうもありがとうございます。」

□B会長:「いえいえ。実は私自身もいろいろ課題を抱えておりまして、
     ○○で困っておりまして。どうしたらいいでしょうかね?」

□取引先のトップ:「もしよければ、その道の専門家のCさんをご紹介しましょうか?」

□B会長:「どうもありがとうございます。」

(注)メルマガ読者のみなさんに分かりやすくお伝えするため、
 実際にお聞きした話の一部分を加工して記載させていただきました。
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B会長と取引先トップとの会話の概要は、たったのこれだけです。

この短いやりとりの中に、実は重要なポイントが3つ隠されていました。

1.変えられない過去についてではなく、未来の行動に対するアドバイスであること
2.可能な限り、相手の行動を手助けしようとしていること
3.価値判断を入れずに、相手の提案に耳を傾けていること

実はこの会話が、「フィードフォワード」という手法です。

部下やチームメンバーの行動変革・自発的行動を促すためには
「気づきを与えること」が重要ですが、
「気づきを与える」ための方法としては
これまではもっぱら「質問」や「フィードバック」が注目されていました。

ただ、多くの方にとって他人からのフィードバックは受け入れにくいのでは ないでしょうか。

通常フィードバックというものは「上司から部下への指導」や
「お客様からのクレーム」などの過去のネガティブな出来事についての
感想や意見を伝える手段として使われることが多く、受け手に
不快な感情をもたらします。

「なんで、あなたにそんなことを言われなければならないんだ!」
「そんなことは言われなくても、分かっているよ!」
といった反論したい気持ち、不満が心の中で勝手に鳴り始めるわけです。

エグゼクティブコーチングの第一人者であるマーシャル・ゴールドスミス氏は、
「リーダーの悪癖を改善するのが私の仕事」と断言しています。

そして悪癖を改善するためには、この未来の行動を変える
フィードフォワードの実践が効果的とのことです。

私がAさんからB会長のお話をお聞きしたとき、
まさしく「フィードフォワードの実践」そのものであり、感動しました。

そして、さらに私が感銘を受けたことは
Aさんがすぐに自身の部下にフィードフォワードの方法を教えて
現場での実践を促したこと、
そして、「Aさんがリーダーとして変えたいこと」をリストアップし、
大勢の部下のみなさんにそれを公表し、
コミットメントとして宣言されたことです。

“いまは会社が変革するとき。
 会社の業績を上げるために、自分自身が率先して変わっていきたい”
というAさんの言葉にはとてつもない”情熱”がありました。

メルマガ読者である皆さんも
「フィードフォワード」を通して、
明日の行動を何かひとつ変えてみませんか?



■ ビジネスコーチの目

◆女性と男性のバランスが「最強チーム」を生む!?

「チームとしての結果・パフォーマンスを最大限に高めるためには
誰をメンバーに入れるべきか?」

リーダーの頭の中では常に、こうした質問がグルグルと
駆け回っています。

つい先日、NHKで「強いチームを作る」うえで
大変興味深い3回シリーズのドキュメンタリー番組が放映されました。
NHKスペシャル「女と男・何が違う、なぜ違う」という
科学番組です。

そこでは最近、女性と男性の新たなパートナーシップが
企業の現場や宇宙開発で注目を集めているという事例が紹介されていました。
宇宙開発といえば、これまで男性中心だったチーム編成でしたが
男女関係に注目したものに変わろうとしているというのです。

チームのゴールを達成するための
「最強チームを作る」ためには、どのような男女比が望ましいのか?
という問いに番組は明快な答えを提示していました。

150回以上の実験を経て導かれた結論は、
「女性だけで編成されたチーム」よりも、
「男性だけで編成されたチーム」よりも、
「男女混合編成のチーム」の方が、より高い成果を上げたというものでした。

その理由は、
女性が得意なのは「チームをまとめるコミュニケーション力」
男性が得意なのは「目的を成し遂げる力」
であり、
女性だけだと「必要以上にリスクを避ける傾向」を生み、
男性だけだと「競争心が働き過ぎてチームを危険にさらすリスク」が
あるからだそうです。

最新の脳科学の研究では
女性と男性が、違った脳のネットワークを使って同じ知性を獲得している
ということが分かってきているそうです。

これからのリーダーには
「女性の得意」と「男性の得意」を深い部分で理解し、
それをチームの活動に活かせることが求められるのではないかと思います。
そのことが結果として働きやすい職場をつくることにつながるのかもしれません。