現場を読む

■ 第3回(2008.07.10):「もう新しいアイデアなんか、思い浮かびません」と言われたら…

ビジネスコーチの橋場 剛です。

日々、クライアント企業の組織遂行力向上・業績向上の
お手伝いをさせていただく過程で、いつも直面するシーンがあります。

「もう新しいアイデアなんて思い浮かばないよ・・・」
「やれることはすべてやってみたんだし・・・」
「今までこの方法でやってきたんだからとにかく地道にやるしかない・・・」

アイデアが枯渇してしまっている状態、 言い換えれば、「雑巾を搾りきって、もうこれ以上一滴も水が出ない!」
といった状況です。

こういう状況に陥っている管理職・マネージャーのみなさんに 「ゴール達成のための課題は何ですか?」とか 「最も効果的な解決策を教えてください」といった質問をしても 私の経験上、ほとんどの場合、効果はありません。

しかしながら、「今の状態が続くとどうなりますか?」と聞くと 「今のままでは成果は上がらないと思う」、と伏し目がちな返答。

もちろんアイデアが枯渇してしまっている背景には いろいろな理由があると思います。

しかし、根っこにあるのは

組織のメンバーのひとり一人が 「心の底から組織の目標(ゴール)を達成・遂行したいとは思っていない」

という気持ちがあり、それが思考停止を引き起こしています。

何が何でも目標を達成したいと思っていたら どんな人でも必死になります。

では、どうしたら「組織の目標(ゴール)」を 心から達成したいと思えるのでしょうか?

それは、組織の目標(ゴール)を達成することで メンバー自身が得(トク)するイメージを具体的に認識できているということ。 言葉で言うのは簡単ですが、実際にはなかなか難しいものです。

「個人の目標」と「組織の目標」は常に衝突し、個人の中に 葛藤を引き起こします。

メルマガ読者のみなさんは、組織の目標(ゴール)達成に対して 強いモチベーションを持てないとき、次の1~3のどの心理に 近いでしょうか?

1.個人の欲求はいったん抑制し、組織目標の達成のために全力を尽くそう
2.組織はあくまでも自己実現のための手段。個人目標がその組織目標 に合えば全力を尽くすが、そうでなければ周囲に迷惑をかけない程度にやろう
3.個々がモチベーションを持てないような組織の目標を掲げられている
こと自体が問題だ

みなさんが組織を率いる立場にあるエグゼクティブや 次世代ビジネスリーダーであるとすれば 当然、「上記1」が求められる行動です。 上記2や上記3のリーダーがいたら、そのチームの組織力は著しく 低減してしまいます。

「個人の目標」と「組織の目標」が完全に一致するなどということは ありえません。

もちろん、短期的には完全に一致することはあったとしても 長期的にはしばしば両者は衝突します。

リーダーはいろいろな想いを持ったメンバーとの地道な対話を重ねて なんとか組織目標遂行に向けてメンバーのベクトルを1つの方向に 束ねる必要があるわけです。

「組織から『一滴の水』も出なくなる前にすべきこと」が何か、 読者のみなさんはもうお分かりでしょうか?

言うまでもなくリーダーは率先垂範が求められます。

その上でメンバーに対して 「何のための、誰のための目標なのか?」 「その目標が達成された先には何があるのか?」 そういったイメージ化と意味付けが、組織遂行力を高めていく上では 極めて重要です。

仮にその「組織の目標」にチームのメンバー全員が賛同できなかったとしても その「組織の目標」にどのような「意味付け」をし、 どのように部下やメンバーに翻訳して伝えていくか。

それこそがエグゼクティブや次世代ビジネスリーダーにとって 必要不可欠なプロセスなのだと思います。



■ ビジネスコーチの目

◆ 「フレーミング効果」とリーダーの言葉

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 「生存率5%」と「死亡率95%」。
 実質的には同じことを言っているのに、受ける印象は随分異なります。
 数字やデータのどの部分に焦点を当てるかで受け手の判断が変わる。
 これがフレーミング効果です。
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日経ビジネスアソシエの2008年7月15日号に 「行動経済学で分かったビジネス心理術」という 特集記事が掲載されました。

エグゼクティブ次世代ビジネスリーダーが どのような言葉を使って情報共有するか、 どのような言葉で質問やフィードバックを行うかは 組織のメンバーの意識やモチベーションに大きく影響します。

どのような問いかけをすれば、組織のメンバーの思考が働き いいアイデアが出るのか、これまでに様々な言葉を試してきましたが いわゆる「これ以上、水滴がでなくなった状態」で 効果的な質問が1つあります。

◎「どんな工夫の余地がありますか?」

という質問がそれです。

【工夫】よい方法・結果を見出そうとして、いろいろ考えをめぐらすこと。 また、その考えついたよい方法。
【余地】まだ何かをすることができる・場所(ゆとり)

この2つの単語にはこうした「可能性」を感じさせる ニュアンスを含んでいます。

組織のメンバーに質問を投げかけて考えさせ アイデアを引き出すことは大事です。

しかしながら、いつも
「課題は何ですか?」
「解決策は何ですか?」
「次の一手は何ですか?」
といった「定番の」質問ばかり繰り返していると すぐに行き詰まってしまいます。

「どんな工夫の余地がありますか?」 という質問は「前向きな思考を促す質問」の1つの例ですが、 会議において閉塞感・行き詰まり感が見受けられたときに どのような言葉で視野を広げればいいか リーダーは常に複数の言葉を用意しておくことが 必要ではないでしょうか。